1. 中古マンションの物件選びの注意点
1-1. 物件選びの方法は2つ
中古マンションの物件探しで希望条件を固めて候補物件があがってきたら、あとはそこからの絞りこみです。
⇒リノまま【知る・調べる】中古マンションの上手な探し方~引きこもり物件探しのススメ~
※エリアや築年数、相場価格や資産価値などが気になる方はまずはこちらの記事で物件探しのコツを身につけましょう。
住宅ローンの仕組みや審査が不安な方はコチラもあわせてご覧ください
⇒リノまま【知る・調べる】住宅ローン審査の悩み解消します!審査の注意点と対応策
とはいっても当たり前ですが、世の中に「完璧な物件」は存在しません。どんな物件にも必ずリスクがあります。
どんなリスクがあるか、それは自分たちが許容できる/対応できるようなものかどうか、を短期間で見極めた上で「買ってよい物件かどうか」を決断しなければなりません。
従って、物件選びの段階では要点をおさえた物件の調査と調査結果をもとにした判断をスピーディーにこなしていきます。
その方法は以下の2つです。
・誰かがつくったもの(資料や書類など)をみてチェック(間接的情報)
・自分で物件の現地を訪ねて(内見)チェック(直接的情報)
それぞれのポイントを確認しておきましょう。
1-2. 資料からチェックすることと内見でチェックすること
不動産ポータルサイトの記載情報をはじめ、物件に関連する情報の資料となるものは意外と簡単に手に入るものも沢山あります。
まずはそれらの資料をもとに
・候補から外すべき物件があれば外す
・資料からでてきた疑問点をもとに内見でチェックしたいことを洗い出す
といった検討をすすめましょう。資料の確認はいわば「予習」です。
次は現地での内見です。内見のときには、
・上記で洗い出したポイントのチェック
・現地にいかないとわからないことの確認
(日常の管理状況、住民の方の雰囲気、周囲の様子など)
・資料でチェックしたことと現地でみたことで印象が変わったポイントの確認
をしておきましょう。内見こそが最も大事な「本番」です。
上記の中でさらに不安こと、疑問に感じること、違和感などが出てきたら、不動産会社を通して、さらに専門的な資料をとりよせて調べてもらう、必要であれば再度現地を確認する、といった流れを繰り返します。この段階が「復習」です。
その際、必要なのは常に「自分は何が不安なのか/何を知っておきたいのか」「どのように不安点を解消できればこの物件の購入を決断できるのか」を自分自身で整理しておくことです。
仮にこの物件は購入しない、という結論になったとしても検討の過程で「どんなチェックをしてどんな結果だったから買わなかったか」が残っていれば、次の物件の検討がスムーズなるからです。
1-3. 内見する物件はできるだけ絞り込む
とにかく物件を沢山内見したい、という方がよくいらっしゃいます。
数をこなす、というのも一つの考え方ではありますが、「とにかく沢山みる」というのには私はあまり賛成しません。
ここにあげたような「調査→チェックポイントの整理→内見→検討」を繰り返すにはかなりのエネルギーが必要ですので、一度に多くの物件をみるのは困難です。
逆に、この「調査」「チェックポイントの整理」「検討」をきちんとせずに内見だけを続けていると、いつまでたっても自分たちの物件選びの課題が整理されずに、「優良物件がない!」と延々と物件探しと物件選びを続けることになってしまいます。
「内見」はしっかりとした目的意識をもって行かなければ、時間と手間の無駄遣いです。
物件選びであれこれ悩むにも「内見」だけは絶対にあなた一人ではできません。
当然ながらあなただけでなく、物件の売主さま、同行する不動産会社さまなど、多くの人たちにも時間と手間がかかります。
不動産ポータルサイトからみた候補物件や不動産会社が紹介してくれた候補物件が10件以上でてきたとしても、事前の書類などの調査を通して候補を絞り込みましょう。
結果、内見に行くのは3~4件にとどめて、検討物件がなくなってしまったら、再度候補物件がでてくるのを長いスパンで待つのか、条件を見直して探し続けるのか、を冷静に考えましょう。
2. こんな中古マンションは要注意!
どれだけ立地がよい、安い、理想的な広さ、に見えても注意が必要な中古マンションはあります。
例をあげると、
・管理費が高すぎる/安すぎる
・修繕積立金が高すぎる/安すぎる
・総戸数が少ない(30戸未満)
・管理費や修繕積立金以外に大きな金額での月額支払いがある
・借地に建っている
・旧耐震基準で建てられている
・告知事項あり、という表記がある
などなど
決してこれらのマンションが「ダメ」というわけではありません。逆にいうとこういった「要注意」の条件が全くない物件を探そうとすると買える物件なんてなくなってしまいます。悪いようにみえる条件があったとしても、その分以上に物件価格が安いのであれば検討する価値はありますし、他でカバーできるようなことであれば問題ありません。
ただ、以下にあげるような条件にあてはまるマンションについては、各条件について「詳細はどうなっているか」「自分たちのこれからの暮らしにとって大きな問題にならないか」といった確認は必須です。
特に「未来」を想像したときにどんな問題がありそうか、は重要です。
そのためにいろいろな項目を見ていく上で「これって何?なんか変だから確認しよう」というアンテナをたてておおくことと、それぞれの項目の内容を表面的に判断するのでなく「どうしてそうなっているか」の理由を確認する、というクセをまずつけておきましょう。
3. 中古マンションの物件調査の方法① マイソクのチェック
よく不動産会社でわたされる物件情報のチラシのようなもの。これは「販売図面」とか「マイソク」と呼ばれるものです。
別に不動産会社にいかなくともSUUMOやHome’s、at homeといった不動産ポータルサイトでもほぼ同じ情報は手に入ります。なぜなら不動産を販売するための広告には必ず記載しなければならない情報というのが法律で決まっているからです。
なのでこれらは「最も手に入りやすい物件の調査情報」です。
さすがにこの情報「だけ」ではマンションの内容はよくわかりませんが、「ここは注意が必要!」といったポイントがどこにあるのか、までは慣れるとすぐにわかるようになります。
そんな誰でも手に入る情報をまずはチェックしてみましょう。
3-1, 管理費
マンションを購入したら毎月支払うことになるのは住宅ローンの返済額だけではありません。通常のマンションでは毎月「管理費」や「修繕積立金」というお金を管理組合に支払う必要があります。
その中でこの「管理費」はマンションに管理人さんがいたり、毎日共用部の清掃をしていたり、といった「日常の管理業務」をおこなうための費用です。
マンション各戸の所有者全員で構成される「管理組合」はこうった日常の管理業務をおこなう「管理会社」等と契約をしてその費用を支払っています。そんな費用を各戸の所有者の方が毎月支払う管理費の中で賄っているのです。多くの場合、所有するマンションの専有部の面積の比率に応じて支払う金額がきまっていますが、2018年に国交省がおこなったマンション管理の調査によると、1戸あたりの平均額は月額10,862円です。
マンションによってはこの月額約1万円という金額よりも異常に高いケースがあったり、逆に異常に安いケースがあったりします。
・管理費が高すぎる
→それだけ「お金がかかる」サービスを提供している可能性があります。例えば、「管理人さんが24時間体制でいる」とか「マンションの敷地内にプールがあってその維持管理にお金がかかる」など。
いずれにしても毎月3万円や4万円といった非常に高い管理費の設定になっている場合は、その理由が知りたいところです。もし「お金がかかる」設備やサービスを提供していることが要因であれば、それが自分たちの暮らしにとって必要なものかどうかを考えましょう。
あまり必要ないものなのに管理費だけが高い、というのはマイナス要素です。
・管理費が安すぎる
→こちらはそれだけサービスを切り詰めている可能性があります。たとえば「管理人さんが常駐していない」とか「日常清掃の頻度が少ない(週2回だけなど)」とか「ゴミの収集日は住民の方が当番制でゴミ捨て場の整理整頓をしている」など。
安いには相応の理由があります。安すぎる場合も同様にその理由を確認して、自分たちに問題ある条件でないかどうかを検討しましょう。
3-2. 修繕積立金
マンションの建物全体を適切にメンテナンスしていくためには、単に「不具合が出たらなおす」だけではなく、定期的な修繕が欠かせません。所有者の方々がお金を出し合って積立貯金のような形にした上で、計画的に修繕を実施していくためのお金が修繕積立金です。こちらも管理組合に毎月支払うことになります。
2021年に国交省から発表された「修繕積立金のガイドライン」には階数や規模別の修繕積立金の平均額がでています。こういった資料をざっくりみていくと1㎡あたり月額270円~280円程度の修繕積立金が目安になります。70㎡のマンションの場合は月額2万円弱にも及びます。
この目安金額と比較して異常に安い場合や高い場合は注意が必要です。
・修繕積立金が高すぎる
→修繕積立金の金額はそれぞれのマンションの事情によって変わってきます。古いマンションで過去に修繕積立金が安く設定されていた、といったケースでは、築年数が古くなるに従って給排水管やエレベーターといった大きな改修のためのお金が足りなくなって、一気に値上げした、というケースもあります。また、段階積立方式といって、築年が経つに従って修繕積立金を値上げしていくような計画をたてているマンションもあります。さらにはそのマンション特有の設備などに異常にお金がかかる、というケースもあります。
なぜそうなっているか、を確認するようにしましょう。
・修繕積立金が安すぎる
→修繕積立金は高いよりも安すぎる方が怖いです。適正な額の徴収がなされていないと、給排水管の更新といった建物全体にとって大切な修繕工事が適切に実施されないケースがあります。また、これらの工事のために急に修繕積立金を値上げする、といったケースもあります。いずれにしても安い「理由」が大切です。
修繕積立金は建物全体の長期修繕計画と見比べてみて、不足するのであればいつか値上げがなされることになります。
「具体的にどのくらい上がりそうか」は細かな調査を重ねないとわかりませんが、1㎡あたり月額270~280円前後よりも安い場合は、仮にこのレベルまで値上がりしても自分たちの毎月の支払は大丈夫そうか、だけは考えておきましょう。
⇒リノまま【知る・調べる】「マンション管理」のチェックポイント 管理費・修繕積立金が「安すぎる」のは危ない!
3-3. 総戸数
総戸数が少なくなると修繕積立金が高くなりがちです。戸数が多い方が共用部は大きくなりますが、逆にどんな少戸数のマンションでもロビーや階段、エレベーターといった一定以上の共用スペースは必要です。そういった共用部の修繕を何戸で担うことになるのか、の違いです。
また、管理組合の運営にあたっても少人数での構成になる分、一人の方の影響力は大きくなります。マンション全体のことをしっかりと考える方がメンバーにそろっていた非常に強力な管理組合になりますが、一方で万が一問題住民がいた場合、そのリスクは大きくなります。
総戸数については「30戸以上」を目安に物件探しをするのがよいでしょう。
3-4. その他の月額の支払い
マンションによっては町内会費、インターネット接続費、など、管理費・修繕積立金以外にも毎月支払う必要がある費用が設定されていることがあります。
月数百円といった少額のものであればあまり気にする必要はありませんが、中には月額1万円近くなることもあります。
ルーフバルコニー使用料、専用庭使用料、駐車場使用料(主に1階住戸の庭部分に駐車場がある場合)といった「特定のお部屋の所有者にだけ発生する費用」もあります。
これらも「どんな目的で支払うお金か」「自分たちに必要な出費と考えてよいか」を確認するようにしましょう。
3-5. 築年 新耐震か旧耐震か
「旧耐震」と呼ばれるのは1981年6月以前に建築確認がなされた後に建てられた建物です。従って竣工年をみただけでは新耐震基準か旧耐震基準かは実はわかりません。なぜなら建築確認はマンションの建設に取り掛かる前におこなわれるもので、その後数か月~2年程度の時間をかけてマンションは建設されるからです。建設にかかる時間は建物によってまちまちです。1983年に竣工したマンションでも、1981年6月以前の旧耐震での建築確認というケースもありますし、1981年竣工のマンションが新耐震だった、というケースもあります。
住宅ローン減税などでは昨年から、1982年以降に竣工したマンションは新耐震基準同等にみなして扱う、というルールになっています。が、一方で住宅ローンの審査条件などでは厳格に新耐震基準のマンションかどうかをみられるケースもあります。
目安としては竣工年が1983年以降のものは新耐震基準だろう、と考えてもよいですが、1982年、1981年竣工のマンションは「旧耐震基準かもしれない」「耐震性にリスクがあるかもしれない」「住宅ローンの審査が少し厳しめになるかもしれない」と考えておきましょう。
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3-6. エレベーターの有無
現在の法規制では高さ31m以上の建物にはエレベーターを設置しなければなりません。これはおよそ7~10階建に該当します。
逆に考えると6階建以下の建物ではエレベーターがない、という可能性があります。特に築年数の古い物件では要注意です。安い物件で内容をみていったらエレベーター無しだったというのはよくあるケースです。
ここまでは誰でもチェックしていますが、中古マンションを探している方は、「隠れエレベーター無し物件」に要注意です。
「スキップフロア」という言葉をご存知でしょうか?
築30年超の物件で時々みかけるものですが、エレベーターはあるものの、停止する階と停止しない階がある、というものです。例えば7階建てのマンションで、エレベーターの停止階が1階・4階・7階のみ、といった場合、5階のお部屋にいくには「4階までエレベーターを使ってその後階段でのぼる」「7階までエレベーターを使ってその後階段でおりる」のどちらかにあります。
つまり、最後の数階分は階段を使うことになるのです。
間取りをみたときに両面にバルコニーがある、といった物件の際は要注意です。
エレベーター無しの物件やエレベーターはあるけども停止階でない物件などは周囲と比べて安い価格になります。
ただ、そのマンションは雨の日も風の日も出かけたり帰ってきたりする場所です。荷物が沢山ある日もあれば、体調が悪い日もあるでしょう。年数が経つと自分自身も年をとります。そんなことまで想像して、エレベーター無しでもよいかどうか、は判断しましょう。
3-7. 借地権
マンションの中には土地は他の方から借りて、その上に建物を建てている、というケースもあります。都内の人気エリアなどで、駅前の土地は大きなお寺が保有していて、そこから借りた土地の上にマンションが建っている、というのはよくあるパターンです。
そういった場合、借地権が設定されているため、毎月借地料を地主の方に支払う必要があります。借地権のマンションも周囲の物件と比べて安い価格になりますが、以下の点は要注意です。
「定期借地権」と呼ばれる借地権が設定されたマンションは、土地を借りられる期間が決まっており、期間が終了したら建物を取り壊して地主の方に土地を返さなければなりません。そのため、住むことができる期間が決まってしまいますし、当然ながら残り期間がわずかになれば売ることはほぼ不可能です。建物の取り壊し費用も必要になるので、借地料に加えて、解体積立金という月々の支払いも発生します。
一方で「旧法借地権」とよばれる借地権が設定されたマンションでは、土地を借りられる期間は決まってはいるものの、「住み続けたい」という意志があれば、原則契約を更新して住み続けることは可能です。ただ、契約更新時の更新料が必要だったり、借地料の値上げが発生したりするケースはあります。
単に「借地」といってもマンションの敷地全てが借地、というケースはまれです。敷地の一部だけが借地ということもあります。借地の内容は殆どが「旧法借地権」ですが、まれに「定期借地権」のマンションもみかけます。
それらは毎月の支払にも影響しますし、内容によっては「住宅ローンの返済期間が短くなる」「住宅ローンが満額かりられない」といったローン審査への影響も無視できません。
都内の人気エリアで物件探していると気に入った物件が借地権だった、というのはよくありますが、どの場合でも「どんなお金がどのくらいかかるか」「ローンへの影響はあるか」は十分にチェックしましょう。
3-8. 告知事項の有無
ネットでも紙の広告でも物件情報の片隅にポロっと「告知事項あり」とかかれた物件が時々あります。
これは物件を買うかどうかの判断にかかわる重要な事柄で伝えておく必要があるマイナス要素がある、ということです。
主に事件や事故があった物件、室内で人が亡くなっていた物件(事故物件)を指すことが多いですが、その他、建物に大きな問題がある(建築基準法違反や地域の法令への重要な違反など)、近隣に反社会的勢力の事務所などがある、といったケースでもこれらの表現が使われることもあります。 いずれにしてもネガティブな情報なので、具体的な内容を必ず事前にチェックした上で、そんなマイナスポイントを鑑みても購入候補に残しておくか、を判断しましょう。
3-9. ペットの可否
犬や猫を飼っている方や犬や猫のアレルギーのある方には重要なポイントです。国交省のマンション総合調査によると、1999年以前築のマンションでは半数超がペットの飼育を禁止していますが、逆に2000年以降築のマンションでは半数超がペット飼育可になっています。
都内近郊でマンションの物件探しをしているときの体感では、1999年以前築のマンションはほぼ不可、2000年以降はほぼ可、といった印象があります。
不動産ポータルサイトなどで物件探しをしていると、ペット可の条件を付加しただけで一気に候補物件が1/10くらいに減ってしまった、なんて経験をした方も多いことでしょう。
築20~30年前後のペット可の中古マンションを探している方はできるだけ2000年前後以降の物件が予算内におさまるようなエリアで探した方が現実的です。
また、こういった簡易的な情報での「ペット可」もそれだけでは危険です。「ペット可」と表示されているマンションの中にはペット飼育上のルールがきちんと定められているマンションもあれば、逆に何もルールがなくそれぞれ思い思いにペットを飼っている、というマンションもあります。
後者の場合はペットの飼育をめぐって住民の方同士で対立している、なんてケースもあるので、注意しましょう。
3-10. 引き渡しの時期
意外と見落としがちなのはこの引き渡しの時期です。どのお住まいも購入契約して準備をしたらすぐに引き渡してもらえる、というわけではありません。
売主さまが新築のお住まいに引っ越す予定なので、引き渡しは新築完成後の9ヶ月先、とか、売主さまがこれから次のお住まいを探しはじめるので、引き渡しは3ヶ月先、といった具合に引き渡し時期が何か月も先、というケースはよくあります。人気エリアなどでは1年以上先に引渡し時期が設定されている物件が売れていることもあります。
中古マンションを買ってリノベーションしてから住みたい、といった方は、物件を買った後でリノベーションの設計をする期間が必要です。物件を引き渡してもらってもすぐに工事に入れるわけではないので、引きわたし時期が2~3ヶ月先になるのはそれほど大きな問題ではありません。
ただ引渡し時期が半年以上先になってしまう場合は特に注意が必要です。世の中何がおこるかわかりません。周辺エリアの条件が変わってしまうかもしれませんし、物件の相場価格が変わっているかもしれません。これらは良い方向に変わることもあれば悪い方向に変わることもありえるので、引き渡しまでの期間が長い場合は注意しておきましょう。
こういった「変化」の中で一番要注意なのはあなたの健康状態です。住宅ローンを借りて物件を購入しようとすると、団体信用生命保険にはいらなければならないので、物件の売買契約直後におこなう住宅ローンの本審査の際に健康状態を金融機関に報告することになります。この報告は通常半年以内に融資が実行される場合のみ有効です。
もし物件の引き渡し時期がこの団信の告知から半年以上先になってしまうのであれば、再度健康状態について報告しなおす必要があります。物件の売買契約直後は大丈夫だったのに、引き渡しの直前になって住宅ローンの本審査に通らないような状態になってしまう、ということが起こり得ます。
このようなケースでも「契約違反」」とならないように、
・金融機関に住宅ローン用の団体信用生命保険の告知の有効期間を確認しておく
・万が一、上位の告知で住宅ローンの本審査に落ちてしまっても「契約違反」とならないように不動産会社に売買契約の条件を調整してもらう(※ローン特約という条項の有効期限を長くとってもらう)
といったリスクヘッジは不可欠です。
3-11. 現況
現況というのは今の物件の状況です。「空室」「売主居住中」、「賃貸中」といった表記があります。
「賃貸中」の物件については原則自分たちで住むことはできません。その物件を買っても賃貸中の方を立ち退かせることは容易ではありません。そういった物件を購入したら「収益物件」として賃貸中の方から家賃をもらえるようになる、といういわゆる「オーナーチェンジ」物件です。
ただ、「賃貸中」の物件でも今借りている方が退去することが決まっている物件であれば、自分たちの居住用の物件として購入することが可能です。
また、この現況のところで「売主居住中」となっている物件の内見を敬遠する方も中にはいらっしゃいます。売主さまの暮らしている中にお邪魔するのは気が引ける、といった理由からです。
マンション購入は大きなお金が動く買い物です。売主さま居住中の物件は実際にそのマンションに住んでいる方からお隣や上下の方の様子や管理組合の雰囲気を直接ききだせるチャンスです。
売主さまにとっても自分たちの売ろうとしている物件の良さを直接伝えられる貴重な営業チャンスですし、逆に物件にとってマイナスになる情報であっても後々トラブルにならないように誤解のないように直接買う可能性のあるお客様に伝えられる、というのはリスクヘッジになります。売主さまにとっても、内見の際にできるだけ本当のことをきちんと話した方がよいのです。
単に空室のお部屋をみるだけではわからない情報にふれられるので、むしろ物件を選ぶ上では好都合です。
3-12. リノベーションの制限
中古マンションを買ってリノベーションを考えている方にとって、そのマンションでのリノベーションにあたってどんな制約がありそうか、は気になるところです。
細かいポイントは現地をみたり、管理規約などをみたりしなければわかりませんし、現地をみたところで解体工事までしてみないとわからないことも中にはあります。
ただ、マイソクの時点で掲載されている図面から以下などは予測が建てられます。
・壁構造かラーメン構造か
マイソクやポータルサイトの図面をみた時点で壁構造のマンションかどうかをある程度は判断できます。図面に柱型があるかないか/低層の建物かどうかがポイントです。
※図の赤マルのように柱型が図面にあったらほぼラーメン構造/通常は柱同士を結ぶように梁があって、さらに部屋の中央付近にもう1本梁があることが多い
壁構造の場合は「壊せない壁」が室内に何か所かあるため、間取り変更や水回りの移動ができない場合があります。
・パイプスペースの位置
建物全体の配管が通っているパイプスペースの位置も図面上に記載してあるケースが殆どです。図面上では「PS」と表記されています。このパイプスペースに排水管を繋ぎこむことになるため、水回り設備のサイズを変えたい/移動したいといった希望に対して、できそうか厳しそうかをある程度判断することは可能です。
・梁の位置
上記の壁構造かラーメン構造か、から一歩すすんで、ラーメン構造の場合、梁がどのあたりにありそうか、の予想ができます。
それによって、キッチンの排気ルートがどうなっているか、キッチンがどこまでなら移動できそうか、なども予測がたてられます。
・フローリング禁止のマンションかどうか
現在はほぼ見かけませんが、2000年以前築のマンションではフローリングを禁止しているマンションが多くありました。これも図面上の表記で床がフローリングの表記になっていない場合など、「もしかしてフローリング禁止?」といった予想がたてられます。
⇒リノまま【知る・調べる】リノベーションで「できること」「できないこと」を一覧表で解説
3-13. アスベスト 特に飛散しやすいレベル1とレベル2に注意
有害物質であるアスベストですが、2006年9月以前に竣工した建物ではわずかであっても使用されていることが殆どです。ただ、大きく問題になってくるのは「飛散しやすい状態」で使われているかどうか、で特に「レベル1」や「レベル2」といったアスベストが見つかるとその除去や処分の費用が100万円超でかかってくることがあります。
とはいえ、この段階で手に入る情報には「アスベスト」という項目はありません。そのため専有部内にアスベストが使われているかどうか、は実際にサンプルをとって検査してみないことにはわかりません。
ただ、要注意な物件はマイソクやポータルサイトを見ている段階でもあたりはつけられます。築年数と構造、室内の写真から予測します。
・築年数の古い鉄骨造の建物
→鉄骨造のマンションでは耐火用にアスベストを吹き付けてある場合がよくあります。
・築年数が古い物件で天井に吹付材を使っている
→天井にひる石とよばれる吹付材が使われている際、アスベストが含有されている場合があります。
これらはいずれもアスベストが含まれていた場合は飛散性が高く危険ですし、除去に多くの費用を要します。
アスベストのありそうな物件の場合は、専有部内を検査した実績があるかどうか、や棟内で過去に専有部のアスベスト除去対応をおこなった履歴があるか、などを確認の上、万が一アスベストがでてきても対応できるような予算計画を組んだ上で購入するようにしましょう。
3-14. 広さ
マンションの専有部の広さは通常「壁芯」という方法で算出されたものが、ポータルサイトやマイソクに表示されています。壁の中心ではかった面積、という意味です。
一方で住宅ローン減税などの税制優遇の基準になる「登記簿面積」は「内法」で算出された面積で、これは完全に壁の内側のみではかった面積、という意味です。
そのため、マンションの登記簿面積はポータルサイトやマイソクの表示より2~3㎡程度小さくなります。物件選びの検討段階で50㎡ぎりぎりのマンションを検討している場合などは後々調べてみたら住宅ローン減税の対象外だった、といったケースがあるので注意が必要です。
さらに小さな物件を検討している方は住宅ローンの点からも注意が必要です。一般的に30㎡以上のマンションは住宅ローンの審査可能、とされてはいるものの、50㎡を切るマンション、40㎡を切るマンション、と徐々に審査が厳しくなります。
一定割合以上の自己資金が要求されたり、金利の条件が悪くなったり、という可能性は頭にいれておきましょう。
3-15. マイソクチェックのまとめ
ここまでみてきてどうでしょう?
物件選びの第一段階、マイソクやポータルサイトでは全ての情報を手に入れることは不可能ですが、「この物件のこのポイントは注意が必要だな」とか「内見のときにこのポイントをしっかりチェックしよう」とか「不動産会社に詳しく調べてもらおう」といった気づきは数多く得られる材料がそろっています。
物件選びは漫然とすすめていたら大失敗する可能性があります。住宅購入という大きな決断に向けてしっかりアンテナをたてて不思議だな、と感じたことを洗い出しておくのが秘訣です。
4. 物件調査の方法② 事前にGoogleマップをチェック
ここまでしっかり物件情報をみていれば、内見にすすんでみてもよいのですが、マンションの外観や立地に拘りがある方はGoogleマップを活用してみましょう。
ストリートビューを使って駅から物件まで歩いていみたり、物件の近所を散策したり。
「マンションの外観は愛せそうか」「近くにどんな建物があるか」「日当たりはよさそうか」「駅からの道はさびしくないか」などなど、実際に足を運ぶ前の「予習」をしっかりしてみて、「やっぱりやめとこっかな」って物件は候補から落としてしまいましょう。
特に単に地図をみるだけではわからない駅からマンションまで、マンションから学校までの道のアップダウンなどは事前にストリートビューでみておくとイメージがわきやすいです。
横浜など丘陵地の多いエリアでは同じ「駅徒歩10分」でも印象が180度変わってくることが多々あります。
こうしてGoogleマップをみていると、川や海の近くや斜面に建っているマンションなどは、浸水被害や土砂災害などが気になることもあります。早めにハザードマップをチェックしてきましょう。
川に近い場所が利便性の高いエリアとほぼ重なるので、過度にハザードマップを気にしてしまうと買える物件がなくなってしまいますので「どこまでのリスクなら受け入れるか」「どこまでなら利便性をおとしてもよいか」をこの段階で改めて考えるのをおススメします。実際に候補物件とハザードマップがあると現実感をもって考えられるので。
5. 物件調査の方法③ 不動産会社を通して資料をチェック
さて、内見する物件の候補は絞れてきたでしょうか?不動産会社を通して内見を手配する際、以下の資料についてはできるだけ事前にもらうようにしておきましょう。
あくまで感覚値ではありますが、さきほどのマイソクチェックで感じた疑問のうち8割くらいはこれらがあれば解消できることでしょう。
5-1. マンション管理に係る重要事項調査報告書
よく「重要事項調査報告書」「重調」(じゅうちょう)なんて呼ばれる書類です。
間違いやすいですが、物件の契約前に説明をうける「重要事項説明書」とは別のものです。
こちらはマンションの管理会社が作成している書類で、管理組合の運営状況や管理規約にある基本的な住民のルール、建物の修繕の状況などの要件がまとまっています。
マンションを事務所として利用することができるかどうか、などはこの重要事項調査報告書や管理規約をみるとわかります。
事務所利用可能なマンションは好立地かつ築古の物件に多いですが、不特定多数の方が敷地内に出入りすることを認めているマンションなので、防犯や静かな住環境を重視したい方にとってはマイナスポイントです。
ここでもし、購入しようとしているお部屋で「管理費の滞納」や「修繕積立金の滞納」があった場合は要注意です。売主さまにこういった滞納がある場合、マンションを購入した方に滞納分も含めて支払う義務が発生します。また、こういった支払うべき費用を滞納している方が売主です。例えば国税に物件が差し押さえられてしまって、手付金を支払ったのに物件が手に入らなかった、なんてことがないように不動産会社にリスクヘッジの方法を確認しておきましょう。
また、購入しようとしているお部屋ではないものの、マンション全体で管理費や修繕積立金の滞納が100万円以上ある、といった場合も要注意です。不動産会社を通して、何故そのような多額の滞納がでているか、どんな対策をとっているか、を確認しておきましょう。
あまりに滞納が多いマンションは管理組合の運営が適正になされていない、ということになりますので管理上の大きなリスクがあります。
⇒リノまま【知る・調べる】「マンション管理」のチェックポイント 中古マンションを蝕む「最大の敵」とは?
5-2. 管理規約
マンションの住民の方、所有者の方が守るべきルールを定めたものです。
全部で100ページを超える書類になっていることが殆どですが、後に述べるように大半の箇所についてはどのマンションでも同じようなことが書いてあるので、この段階ではいちいち全部は読む必要ありません。
5分で充分なので以下に述べるようなポイントだけ目を通しておきましょう。
マイソクチェックでみてきたようなペット飼育についてきちんとしたルールがあるか、リノベーション工事にあたってフローリング禁止などの制限があるか、などはこの規約をチェックすると詳細がわかります。
が、それ以上にみておいてほしいのが、「共用部の持ち分比率」・「議決権の比率」と「承認事項」の項目です。
マンションの管理組合は区分所有者で構成されていて、通常は所有している住戸の専有部の広さに応じて共用部の持ち分や管理費・修繕積立金の金額が決まっています。また議決権につても1所有者に対して1票というのが通常です。
しかし、マンションによっては特定住戸の所有者が議決権の何割かを保有している、といったケースがあります。マンションを建てた時点で元々の地主だった方への配慮としてこのような形にしている、といった事情によるものでしょう。こうった場合、管理組合で何かきめようとしても皆の合議できまるわけではなく、特定の方の承認がないと何も決められない、という状況になってしまいます。
長く住まうことを考えた場合、このような規約があるマンションの購入はリスクが大きいです。
この「管理規約」はほとんどの場合、国交省の作成した「マンション標準管理規約」の通りにつくられていますが、最後の方に「承認事項」としてそのマンション特有の事柄が記載されています。
そこには例えば携帯電話のアンテナを屋上に建てることになっている、とか、広告用の看板をマンションに設置することになっている、とか、町内会の行事にマンションの敷地を使ってもらうことになっている、といった、特殊なルールについて区分所有者は了承することと定められています。
これらの中に疑問に感じるような項目が入っていないかどうかは早めにみておくことをおすすめします。
5-3. 長期修繕計画
マンションの建物全体の修繕について30年程度のスパンで定めた長期修繕計画です。この長期修繕計画についてはマンションによっては見せてもらえないケースがあったり、見せてもらえたとしてもコピーしてはいけなかったり、とマンションによってスタンスが大きく異なります。
内見の前にチェックできると一番よいのですが、実際には購入に向けての検討が進む中でようやく入手できる、ということも多いです。
いずれの場合でも絶対にみておくべき資料ですし、長期修繕計画が見られない状況で購入を決めるのはおすすめしません。「マンションの所有者以外には長期修繕計画を見せない」というマンションであればそれを理由に購入を見送ってもよいと私は考えます。
また、この長期修繕計画はあればよい、というものではありません。修繕積立金の設定も含めた資金計画がつくられているか、計画が適正に運用されているか、計画の中に給排水管の更新といった重要な項目が入っているか、などを見ておくのは必須です。
⇒リノまま【知る・調べる】マンションの長期修繕計画とは?中古マンション購入時の注意点を紹介
6. 物件調査の方法④ 内見で現地をみてチェック
マイソク、Googleマップ、各種資料をみてきて、いよいよ内見です。自分たちの大切な住まいを決めるために当然ながら内見は最も重要ですし、現地を見ないで物件を決めることは絶対にやってはいけません。
今までやってきたことは全て内見のための壮大な準備だった、といっても過言ではありません。いろいろな情報にふれてきたからこそ、内見のときに短い時間の中でどんなことを確認しておかなければいけないか、がわかるのです。 内見にいくときは必ずそこに住む家族全員で、事前にチェックした情報も家族全員で共有してから向かうようにしましょう。
6-1. 周辺環境 駅までの道のり
そのお住まいで暮らす場合、メインの移動手段が電車になる方はかならず物件の現地へは「自分で」「電車を使って」行くようにしてください。
よく不動産会社が車で物件まで連れて行ってくれる、なんてケースがありますが、それでは自分たちの日々の暮らしが想像できません。
駅から距離がある物件であればその「遠さ」を、坂道だらけの道であればそのしんどさを、駅からバスを使う物件であればそのバスの利便性を、必ず自分で体験するようにしましょう。
自分で体験すると思わぬ発見があります。道中にスーパーや薬局はあるか、ちょっとひとやすみできそうなカフェや定食屋はあるか、など、それぞれの暮らしにとって大切な要素がかないそうなところかどうか、を家族全員の目で見ておきましょう。
6-2. 共用部① エントランスまで
マンションについたらエントランスに入る前から見ておくポイントは沢山あります。
まずはエントランスから各住戸への動線に段差があるかどうか。エレベーター有の物件であっても、外からエントランスにいくまでに20段くらいの階段があってまわりにスロープがない、なんて物件もあります。
自分たちが年をとった後のこと、自分たちに子供ができてベビーカーを使うときのこと、足を怪我して松葉づえをついているときのこと、いろんなシチュエーションを想像したときに、共用部がバリアフリーのつくりになっているかどうか、は重要です。
もちろんスキップフロアになっているマンションかどうか、やエントランスの位置は駅からの動線便利なところにあるか、エントランスに入ってから住戸までは遠くないか、なども現地でみておきたいポイントです。
駅徒歩~分、という表記をみると近そうにみえてもマンションの敷地にはいってからが迷路みたいで遠い、なんてケースもよくあります。
6-3. 共用部② 共用ポスト
次に目に付くのは共用ポストです。ポストをざっとみわたしたときにチラシであふれているポストは沢山ありませんか?
こういったお部屋には所有者の方が住んでいない、という可能性が高いです。以前は所有者の親御さんが住んでいたものの相続した子供たちが放置している、といったパターンです。
所有者の方が自ら住んでいないマンションは管理の状態が悪くなりやすいですし管理費等の滞納も発生しやすいです。どうしても自分たちが住んでいるマンションのことでないと自分ごととして管理組合に主体的に参加しなくなります。リゾートマンションなどで管理が適正におこなわれなくなって社会問題化しているのは同様の理由からです。
できるだけ所有者の方が自分で住んでいるマンション、が理想です。
6-4. 共用部③ 掲示板
次はマンションの掲示板を見てみましょう。掲示物はきれいに整理してはってあるか、古いものが放置されていないか、掲示物の中に住民トラブルがあることをにおわせるものはないか、などです。こんなところにもそのマンションの日常があらわれます。
6-5. 共用部④ 自転車置場と駐車場
マンションの自転車置き場をみるとどんな方が住んでいるか、が垣間見えます。子供用自転車や子供用シートのついたママチャリなんかが沢山とまっていれば子育て世代の多いマンションであることが想像できます。自転車の置き方がきれいかどうか、などでマンションの方のマナーなんかもみえてきます。
他にも自転車置き場に屋根がついているか、自転車置き場が2段ラック式になっているか、などは電動自転車を使う方にとっては快適につかえるかどうかを左右するポイントです。ラックの大きさによっては電動自転車を断念しなければならないこともありえます。
駐車場は車を使わない方にとってもみてほしいポイントです。自走式の駐車場であれば維持管理費はさほどかかりませんが、機械式駐車場であれば設備の維持管理に大きな費用がかかってきます。おまけに稼働状況がよくなければ修繕積立金の財政状況にも影響します。
当然ながら入居後に車を使いたい方にとっては駐車可能な車のサイズなども要確認です。
6-6. 共用部⑤ ゴミ置場
これもよく言われることですがゴミ置き場をしっかりチェックしておきましょう。屋内にあるゴミ置き場であれば住民の方は24時間いつでもゴミ出しができるので便利です。屋外のゴミ置き場の場合は曜日や時間をあわせて朝ゴミ出しをする必要があります。
利便性だけでなくゴミ置場の整理整頓がどの程度なされているか、ゴミの分別ルールは守られているか、といった管理の状況や住民の方のマナーなどが垣間見えます。
築古のマンションなどで設備は古くても工夫しながら整理しているマンションなんかは好印象ですね。
6-7. 共用部⑥ 建物のコンクリートのひび割れ(クラック)
マンションの外観や共用部では、クラックと呼ばれるコンクリートのひび割れの有無もざっと見ておきましょう。でもひび割れがあるからダメ、ということでは買う物件がなくなってしまいます。コンクリートにはひび割れはつきもの。ヘアクラックとよばれる幅0.3mm以下、髪の毛のような細いひび割れであればあまり心配ありません。
0.3mmを超えるような太く、深いひび割れや中の鉄筋がみえているようなひび割れを放置しているようであれば大規模修繕をはじめとする建物全体の修繕管理の状況を疑ってみた方がよいでしょう。
6-8. 共用部⑦ マンションの「日常」
この他、管理人さんの様子や、内見のときにすれ違った住民の方にあいさつしてみたときの雰囲気、共用廊下に住民の方のものが散らかっていないかどうか、など自分がそこで暮らしているつもりになったときに気になることはもらさずチェックしておきましょう。
6-9. 共用部⑧ 立地の気になること
最後にマンションの敷地をみたときに、立地で気になることはないでしょうか?斜面や山の上に建っているマンションでは土砂崩れを防ぐ擁壁があります。その擁壁は誰がどのように管理しているのか、や土砂災害警戒区域などに該当していないか、などが気になります。また周囲と比べて坂をくだった先、窪地のようなところに建っているマンションでは豪雨の際の内水氾濫などが気になります。
川や海の近くの物件については皆さんしっかりチェックするのですが、それら以外でも現地でみた地形の様子によっては注意が必要です。
6-10. 専有部① 音と眺望
専有部の内見で重要なのは実際に現地にきてみないとわからないこと、です。
ひとつは眺望や明るさ。眺望や明るさは、確認できるのはあくまで現時点での状態です。マンションの前面に建物などが建つと眺望や陽当たりが悪くなってしまう場合もあります。特に眺望重視の方は前面がどんな人がもっているどんな不動産か、ということも不動産会社に追加で確認してもらいましょう。
もう一つは音です。線路の近く、幹線道路の近くの物件を検討する場合には音は重要な要素です。窓を閉めた状態の音、窓を開けた状態の音、電車が実際に通過するときの音、などを必ず現地で確認するようにしましょう。
6-11. 専有部② リノベーションでできること/できないこと
その物件を買った後でどうするか、によってみるべきポイントは大きく変わります。
そのまま住む、300万円以下程度のリノベーションをして住む、という方はまずは「そのまま住んでもよさそうか?」という目で内装をみておきましょう。
このくらいの予算帯であれば床の全面貼替などは難しいですし、お部屋によっては現況のまま活用するところもでてきます。そのまま住んでもよいくらい気に入ったお住まいにワンポイントでこだわりをいれる、といったつもりで見ていく方がイメ―ジがつきやすいです。
誰でもわかることでありながら、図面などで検討している段階ではわからず、内見のときにしっかりみておきたいのは「天井高」と「段差」です。
梁などがあると天井高が低くなっている箇所もあります。測ってみると同じ天井高であってもお部屋のつくりや梁の位置によっては圧迫感を感じることがあります。
また古いマンションでは室内に段差があるケースは多いです。水回り設備の床が高くなっている、というのが一般的ですが、中には各部屋とも段差がある、なんてこともあります。
毎日暮らすお住まいでは、天井高からくる圧迫感やちょっとした段差は意外とストレスになります。リノベーションでどのくらい天井高があげられそうか、段差をなくすことは可能か、などは要チェックです。
ここまでは「誰でもできる」気になることの洗い出しですが、この「気になること」をリノベーションでクリアできるかどうかで物件の購入判断が大きくかわってきます。
従って金額の大小にかかわらず、中古マンションを買った後でリノベーションをすることを考えている方はリノベーションする上でのできること/できないことを内見の段階でどの程度正確に確認できているか、が極めて重要です。
・壊せない壁はどこにあるか
・梁はどこにあるか
・排気ルートはどこを通っているか
・それによってキッチンはどこまで移動できそうか
・床の構造が2重床かどうか
・壁や天井の構造はどうなっているか
・水回りの床部分は躯体がへこんでいるダウンスラブになっているか
・ダウンスラブの範囲がどれくらいか
・パイプスペースはどこにあるか
・排水はどのようにパイプスペースにつながれているか
・給湯器は追い炊きの対応が可能か
などなどあげるときりがありません。一般的な不動産会社の担当者や物件を検討しているあなた自身がこれらをもらさず見ておくのは現実的には不可能です。
希望の位置にキッチンが移動できるか?お風呂の大きさを変えられるか?間取の変更ができるか?天井高がどれくらいとれるか?といったリノベーションでやりたいことが本当にできるかどうかが変わってきてしまいますので、物件を買ってしまってからでは取返しがつきません。
購入後にリノベーションして住みたい、という方はワンストップリノベーション会社を利用して、内見の段階からリノベーション工事についての知識のある担当者といっしょにみておくことを強くおすすめします。
6-13. 専有部③ 売主さまの話をきいてみる
売主さまが居住中の物件であれば、せっかくの機会なので、どんな方が周囲に住んでいらっしゃるか、どんな点で住みやすかったか、などその物件とその環境を最も知る方に質問を重ねてみましょう。
もちろん売主さまがお住まいを売るにあたっては様々な事情があります。売却理由などは直接はあまりきかない方がよいケースもありますので、不動産会社の担当者に「売主さまに住み心地とか近所の方の様子とかをきいてみてもよいですか?」と事前に確認をとっておくようにしましょう。
6-14. 内見後に大切なのは「直観」
ここまで色々な材料を積み重ねてきましたが、大きなお金をかけてこの先何十年も暮らす住まいを決める物件選びはロジックだけでできる決断ではありません。
最後は「気に入った」「ビビッときた」といった、言語化できない「直観」を大切にしてください。
どんな物件にもよいところと悪いところが必ずありますし、どんなによくみえる物件でも購入する際には必ずリスクがあります。
特にその物件の「悪いところ」を細かくならべてみてもそれを上回るような「気に入った」という思いがあれば、それはあなたにとっては優良物件です。
「悪いところ」をどうやってカバーするか、想定されるリスクは受け入れられるものかどうか、を前向きに検討して決断していきましょう。
7. 物件調査の手法④ 購入に進む前に必ず確認
ここまでしっかり物件の検討をすすめてきたら、最後は契約前の仕上げです。今までみてきた資料や内見でもわからなかった、不安だった事柄を確認して解決していきます。不動産会社の担当者の知識やスキルも重要になってくるところです。
7-1. 管理状況を総会議事録や管理会社へのヒアリングで深堀
マンションは管理を買え、と言われるくらい管理状況の良しあしはその後の暮らしに大きく影響します。
内見などを通してでてきた疑問点を管理会社に確認してもらうとともに、必ず管理組合の総会や理事会の議事録も確認してもらいましょう。
問題住民がいるかどうか、とか騒音トラブルはあるか、といった質問を漠然と管理会社になげかけても簡単には答えてもらえません。どのマンションでも多少はこの手のトラブルはあるものと考えておいた方が無難です。でもそういったトラブルが本当に大きな問題になっていたら、総会や理事会の議事録に内容が記載されます。大きな問題はそこでチェックできます。
購入後にリノベーション工事を予定している方は過去棟内で大規模なリノベーション工事をおこなった住戸があるか、その際に騒音や塵芥などのトラブルになったことはあるか、なんかを確認しておいてもらいましょう。
7-2. ハザードマップ
内見のところなどでも触れましたがハザードマップのチェックです。河川の氾濫だけでなく内水氾濫の履歴や地震のときの揺れやすさ、土砂災害のリスクなども一通りおさえておきましょう。
ただ、こういったハザードマップは気にすれば気にするほど買える物件がなくなってきます。浸水や土砂災害、地震などについて極端に評価が悪いエリアは避けた方がよいですが、「全くどのハザードマップにも抵触しない物件がよい」というのは現実的には難しい、ということは理解しておきましょう。
7-3. 電気容量、ガス容量とネット環境
中古マンションでは電気容量やガス容量に制約があったり、ネット環境で特定の会社の光回線を入れることが難しかったり、というケースがまれにあります。
電気は30Aまで、ガスの給湯器は20号と呼ばれるサイズまで、といった制限がある、というものです。物件によっては建物全体の容量とのかねあいでサイズアップができない場合もあります。
ネット環境については「光回線あり」となっていても多くのマンションでは共用部のMDFという装置までは光回線でそこから各住戸までは電話回線やLANケーブルでつないでいる、というケースが殆どです。
在宅ワークなどが一般的になって、回線の速度をあげるために自宅の中まで光回線を引き込みたい、というニーズは増えてきていますが、そういった工事がスムーズに対応できるかどうかは確認が必要です。
あまりに当たり前なのでチェックがもれやすいのですが、両者ともに早い段階でみておきましょう。
7-4. マンションの口コミ
マンション名で検索すると大概そのマンションの口コミがでてきます。他にも事故物件のポータルサイトなどで買おうとしているマンションがでてきていないかなんかも気になってみてしまうでしょう。
特に過去に事件や事故があったマンション、住民間でトラブルがあるマンションなどは気になるところ。下世話な好奇心でもよいのでちょっとだけのぞいてみましょう。
もちろん、こういったネット検索の結果は「根も葉もないうわさ」であることも多々あります。信頼できそうな情報かどうかを見極める必要はありますので、鵜呑みにするのは危険ですが、知っておいて損はありませんし、売買契約した後で気になっても後の祭りです。
この段階で調べてみて、真偽の気になる情報がもしあれば不動産会社の担当者に伝えた上で確認してもらいましょう。
7-5. 耐震診断の内容、耐震補強工事の有無
もし旧耐震基準の物件を検討しているのであれば、耐震診断をしているかどうか、耐震補強工事をしているかどうか、は見ておきたいところです。
特に東京都は「緊急輸送道路」として指定されている大きな道路沿いの古いマンションについては倒壊することなどがないように耐震診断を義務付けており、耐震補強工事の実施を推奨しています。
同じ旧耐震の物件でも耐震診断をしたら新耐震同等の耐震性があった、なんてケースもあれば、かなり大きく耐震性に問題がある、なんてケースもあります。
旧耐震基準の物件として当初から耐震性にプライオリティをおかずに検討をすすめているとこれらの情報を契約直前までチェックしていない、なんてことがありますが、これらは住宅ローンの審査や税金の多寡にも影響しますので、しっかり確認しておいてもらいましょう。
8. 物件選びの最終結論
8-1. 購入可否の判断にかかわる懸念事項を明確に
物件の内見をおこなったら、購入判断にあたっての最後の条件を整理して不動産会社の担当者に伝えるようにしましょう。
この最後の条件とは今まであなたがみてきた、確認してきた中での疑問点で、「この点がクリアになれば買う」といったものです。例えば「図面と構造を確認してキッチンが対面式に移動できること」「自転車置き場に空きがあって電動自転車がおけること」「長期修繕計画をみせてもらったときに大きな問題がないこと」の3点がクリアになれば買う!といった具合です。
もちろんまだ物件の重要事項説明を受けていない段階なので、重要事項に大きな問題があれば契約をする必要はありません。ただ少なくとも自分たちでみてきた、気にしてきたことについては整理した上で購入準備に進む、ということです。
物件選びの検討や内見が1回で終わることは殆どありません。ここまでの審査をくぐりぬけてきた内見物件を検討する際には必ず、その物件のどこがよかったか、どこが悪かったか、最終決断にあたって何が一番ダメな要素だったか、をできる限り整理して、不動産会社の担当者と共有するようにしましょう。
不動産会社の担当者も人間です。何度も物件案内をくりかえしていても、良かったところや悪かったところをきちんと伝えてもらえないと物件の精査やご紹介に力が入りません。あなた自身も同じように「なんとなく気に入らない」といって見送る物件が増えてって疲れてしまいます。
物件選びは結婚相手を選ぶのとよく似ています。うまく言語化できない「好き」や「嫌い」もあります。でも、物件選びはあなた一人だけではなかなかできません。不動産会社の担当者と一緒に進めていく必要があります。だからこそできるかぎりその正体を自分で突きとめようとすることが大切です。
あなた自身が本当に欲しい物件はどんな物件か、は実は自分自身でもよくわかっていません。物件を見に行くたびに「何がよかったか」「何が悪かったか」を整理してそれを不動産会社の担当者など他者と共有する、という積み重ねが、あなたと理想の物件との出会いを近づけてくれるのです。
8-2. 契約日より前に必ず重要事項説明書と売買契約書を確認
ここまでのステップを経て、物件の購入申し込みまですませたら、必ず、契約日より前に重要事項説明と売買契約書の確認をするようにしてもらいましょう。
ここまでのステップであなた自身が気になることは確認できてきてはいるものの、不動産の物件にかかわる専門的なポイントも、実際に物件を買うにあたっての詳細な条件も確認できていません。
不動産の購入は大きな買い物です。思わぬ落とし穴にはまることがないように、前もって契約書類(重説、契約書)の案を見せてもらう、可能であれば内容の説明をしてもらう、というのはとても大切です。
8-3. 決断のスピード
ここまで色々な角度で物件調査、物件選びの方法を述べてきましたが、そうはいっても中古マンション購入は競争です。
人気物件は特に早いもの勝ちで決断の早い人にとられてしまいます。あわてて調査不十分で買うのも危険だし、しっかり調査して選んでいたら先に売れてしまう、という難しさがあります。
だからこそ物件探しの段階、ポータルサイトで情報をチェックしている段階で候補をしっかり絞って、候補物件の懸念事項・要確認事項も予め洗い出しておく、といった準備が重要です。
入念に準備をして、自分たちの判断基準をブラッシュアップしつづけていると、しっかり調査や検討しながらでもここぞというときの決断は早くできます。
内見したらすぐに買う/買わないを決断できるようにしておきましょう。
9. リノままの中古マンション物件調査と物件選び
中古マンションの物件探し、物件調査と物件選び、結構大変だと思いませんか?
リノままでは中古を買ってリノベーションをする方のために、「暮らし探し」と「無理のない資金計画」といった事前の準備を重ねた上で、物件探しのお手伝いをしています。
準備をしっかりとしているからこそ、後悔しない物件選びができます。
この記事であげた細かな項目は私たちが物件を調査したりご紹介したりするときに注意しているポイントの一部です。
リノままで物件探しをしてくださるお客様にはこういった丁寧な調査を重ねて購入前には「リノまま100項目診断」をお渡しした上で物件購入のご判断をいただいています。
中古マンションは買って終わりではなく、買った後、リノベーションしてそこに住むことであなた自身の新しい暮らしがはじまります。
そんな「暮らし」を主語にして物件のことを考えたい、リノベーションのことを考えたい、でも自分たちだけですすめるのはちょっと不安、という方は是非お声がけください。
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